テンポアップで人間から遠ざかる田淵
私もMさんもカラオケが好きである。
基本的に、つるんでいる時どちらかが 「カラオケいこう」とノリで言い、「イェーイ」で入店。何でもかんでもノリで済ましがちなのが私たちの特徴である。
先日も完全にノリだけでカラオケに行ったのですが。
私たちのカラオケは、両者とも相手が曲を知っていようがいまいが関係なく、歌いたいものを歌うスタンスである。
私に関して言えば日頃の鬱憤を爆発させるかの如く叫び、暴れる。そうするとMさんは爆笑しているか真顔か一緒に暴れるか、といった反応を返してくれる。
Mさんは大概優しい。だが腕力が異常に強い。優しさとゴリラ的要素が奇跡的に共存している人であるといえる。
その日は夜のフリータイムで入店していたんだが、三時間程経った頃、Mさんが普通に歌うのに飽きてきたのか曲のテンポを加速させ始めた。カラオケの段階としては第二フェーズに突入したと言っていい。
人はすべからく刺激を求めるものである。
基本的に脳のつくりが単純なので、私たちは見る間に加速の虜になった。敢えて早口の曲を入れてハードモードにしたりするなどして、ドーパミン辺りの快楽物質をどばどばさせた。
そしてMさんが入れた曲で私たちのテンションはその日の最高潮に達することになる。
その曲が、UNISON SQUARE GARDEN(敬称略)の『シュガーソングとビターステップ』である。
音楽的なことには明るくないので、PVのみ簡単に説明させて欲しい。『シュガーソングとビターステップ』は、ひとりの女性会社員の恋模様と、それに連動する脳内のユニゾン(更に略)メンバーの様子を描いている内容のPVである。
ユニゾンの曲は、最近聴き始めたばかりでハッキリ言って口ずさめるのはこの曲のみ。ファンどころか好きと言うのもおこがましいレベルのどにわか。
なので、お互いがしあわせに生きる為にもユニゾンファンの方はこの先は見ないでください。よろしくお願いします。
ここから先はユニゾンファンはいないこと前提で書かせていただくが、私はユニゾンのメンバーについて一切詳しくない。だが、ベーシストが「田淵」という名前なのは知っている。
何故通常ならば最も影の薄い立ち位置であるベーシストの名前のみ知っているかというと、彼が単純に目立つからである。
目立つ、というのは、例えばユニゾンがテレビに出た時、Twitterなどで最も話題となる存在である、という意味である。
「田淵」はめちゃくちゃ動く。
「田淵」はどこでスクショしてもブレる。
「田淵」は妖怪と人間のハーフ。
などといった情報が私のタイムラインに氾濫した結果、「田淵=ユニゾンのベーシスト=妖怪」という偏見にまみれた図式と彼の名前が私の頭にインプットされたのである。
さて、問題の『シュガーソングとビターステップ』。こちらは、カラオケでもPVが流れる仕様となっている曲である。
PV付きの曲を早送りした場合どうなるか?答えはシンプル。
PVも早送りされるのだ。
バンドのPVでは大抵メンバーが演奏するシーンがあり、『シュガーソングとビターステップ』も例外なくメンバーが演奏している。もちろん、「田淵」は妖怪じみた動きをしている。
それが、あろうことかスピードアップするのである。
左右に高速移動する「田淵」。
腕を振り上げガクガクさせる「田淵」。
猛スピードでベースをぶん投げる「田淵」。
既にテンションが上がりまくっていた私は腹を抱えて爆笑。3月にして年内の爆笑ランキング暫定一位に躍り出た。この記録を超えることはなかなか難しいだろう。
文章だけでは全くわけがわからないかとおもう。是非皆さんも、これを機にカラオケで『シュガーソングとビターステップ』を歌ってみて欲しい。
もちろんテンポはマックスで。