5月病な日々

脚色と虚構

創作

愛情から始まる話

彼は仕事で疲れていた。疲れていたのですぐに寝てしまった。彼女は連絡が来るはずだったのでずっと待っていた。日付を越えても彼からの連絡はなかった。翌朝目覚めた彼は彼女との約束を思い出して急いで連絡した。ごめん、仕事で疲れて寝てしまったんだ。彼…

乾燥肌の才能の話

読書は嫌いだ。はじめの5ページがどうしても一緒に捲れてしまう。四苦八苦しているうちに面倒になって、仕方なく捲れた場所から読むのだが、当然内容がわからない。それで読むのを辞めてしまう。私はずっと、君に対してもそんな風にしてきたのかもしれない。…

夢に生きる女の話

明晰夢というものを見たことがない。夢の中の自分はただの自分であり、自分を取り巻く環境、事象、その全てを現実としてしか認識することはできない。目が覚めてはじめて、夢を見ていたのだと悟る。 夫が死んで随分経った。死因はカタカナと漢字がまぜこぜの…

水槽の中と外の話

マグロは泳ぐのをやめたら死んでしまうんだって。友人の言葉に、じゃあお前はマグロだな、とおもう。友人は昔から止まることがなかった。いつもいつも全力で泳いでいた。 友人とは長い付き合いだが、いつ見ても新鮮な恋愛をしている。季節ごとに連れている男…